昔々、"闇"と神々との戦いがあった。
その戦いは長く、激しく、人の世界にまで影響を与え続けた。
やがて"闇"は人の世界へと、その手を伸ばし始めた。
神々は困り果てた。
自身たちの世界のこともあるが、人の世界にまでその余波を与えてしまった。
"闇"は次第に人の世界で力を付け始めていた。
それに神々も気付いていた。
気付いていたが、手が出せないでいた。
あまり人の世界に干渉しすぎれば、それは人の世界の均衡を崩す事を示唆する。
かといってこのまま見過ごせば、人の世界も自身達の世界も危うい。
世界中で"闇"がその姿を、力を現し始めた。
そして、神々は決断した。
自分達が干渉できないのなら、"闇"に対抗すべく術を授けよう・と。
空から授けられたのは八つの力。
それを手にし、徐々に人々は"闇"の力を殺いでいった。
やがて"闇"は人と、神々の手によって封じられた。
世界の果てに、奥深くに、決して抜け出せぬよう、溢れぬよう。
静かに静かに…。
人がいる限り、神々が存在する限り、"闇"は消えることがないから。
空から授かった力を用いた八人はやがて「人の世界を支える」という意味をこめて『八柱神』と呼ばれた。
そして、空から授けられた力は『切れ端』と呼ばれた。
人の世界に『切れ端』は八つ。
そして、それらを所有する国は『絶対中立国』として八ヶ国を世界が認定した。
他国を侵略することも、されることも許されない、中立の立場を貫き通さなければならない。
歴史の流れから見ると、『切れ端』の所有国は幾度か変化している。
『八柱神』の時代は既に神話の時代ともされた。
『切れ端』が遺跡から発掘されたり、代々受け継がれている国もあった。
こうして『切れ端』は着実に時代を越していた。
人から見れば膨大な、神々から見ればそう大差ない刻が過ぎた。
やがて"闇"が再び動き始めた。
それにいち早く気付いたのは人の世界だった。
"闇"が世界を覆ってしまう前に・と世界が下した結論は、"闇"の再封印。
所有国から『切れ端』の使い手が送り出された。
再封印までに、"闇"の力を殺ぎ、その勢力を減らさなければならなかった。
各地でその存在を知らしめていた"闇"を狩っていった。
そうしてようやく『封印されし場所』へと追い込んだ。
結果、『切れ端』の使い手達は"闇"を再び封印した。
"闇"の封印されし場所は神話時代から変わらない 『ライグスの谷』
『切れ端』の八人の使い手は 『八英雄』 として世に知らされた。
しかし、『八英雄』の詳細はどこにも語られなかった。
封印後、彼らは静かに世界の何処かで暮らしているとも、その戦いで命を落としたとも語られている。
事実は定かではない。
所有国もそれらを明確には表明しなかった。
世界の刻暦でそれは C-835年
現在は C-837年 僅か二年前の出来事だった。
しかし、その六年前であるC-831年。
"闇"の到来を示唆するかのような出来事が世界中を駆け巡っていた。
王政国家である ヴェイト が 『切れ端』所有国である ラグド を侵略・崩壊させた。
その折、『切れ端』はラグド国内にはなくヴェイトが手に入れることは無かった。
だが、絶対中立国へと攻め入ったという事実を世界中に知らしめた。
世界はヴェイトを諫めた。
王位を次代へと譲渡、そしてそれらを指揮した者達の刑罰・という形でヴェイトは事を収めた。
こうして一連の出来事は、紙面上終わりを見せた。
世界が再び、平穏に包まれた。
水 面 下 で "闇" が 嗤 ッ テ イ タ
世界がある限り "闇" もまた存在し続けるという意識が、希薄になりつつあった。
C-836年
異変を感じたのは『八英雄』の内の二人だった。
C-837年
その異変を確認したのは『八英雄』の一人だった。
呆然と立ち尽くしたその一人が見たのは―
到来を示唆する鐘の音が鳴り響く丘で
↓背景絵:八英雄