02 // 架空請求
最近はやっているもの。
―架空請求対策。
「また来たー…」
授業終了後に携帯を開けば、架空請求のメールが二件。
いい加減、飽きた。
「何件来た?」
後ろの席に座っている井川が尋ねる。
同じ様に、架空請求のメールが来ているらしい。
「俺、二件」
「勝った。俺五件」
勝つ負けるの問題でもないのに、こうやって些細な事で盛り上がる。
井川とは小学校からの付き合いだった。
それが、気付けば高校に。
お互い、何の示し合わせも無いままこの学校へ来た。
入試の時に気付いた。同じ所を受ける、というのを。
一種の偶然だ。
そう、片付けるにはでかいかな、と思っている。
一緒にいて楽しいから、俺はこれでいいと思うし。
「にしても、うざったらしな。コレ」
井川がげんなりしながら表示画面を見ている。
確かに。
いちいち消すのも面倒くさい。
アドレスを変えようか、とも考えた。
でも、変更したのを伝えるのも面倒くさかったので却下。
そのまま、現在に至る。
日に平均して十件前後、連続して来たり、ちょこちょこ来り。
「戌塚ー」
机にうな垂れたまま、井川の隣の席にいる戌塚を呼んだ。
無表情、というか、どこか抜けているような表情だと俺は思ってる。
本人にそう言って見たら、否定もされなかった。
むしろ肯定されたような気がした。
「どうした?」
体をこちらに向けて戌塚が答える。
クラスでよく一緒にいるのは、井川と戌塚、江山の三人。
いろいろと事情もあって、最近はホントにこの三人と一緒にいるのが多い。
「戌塚ってさ、架空請求のやつ来るか?」
「…いや、滅多に来ないな」
少し考えて返ってきた答えは、それだった。
「羨ましい…」
「初期アドレスのままだからな」
「変えてないのかよ!」
「面倒くさいだろ、考えるの」
戌塚は変なところで怠けるな。
井川も同じ様に突っ込み入れてた気がする。
「そんなに嫌ならフッキにでも頼めばいいだろう?」
「………ああ!!」
機械に一番詳しい、尚且つ、技術的にも精通している人物の名を挙げられた。
そうか、姫さんに頼めばいいんだった。
「何で気付かなかったんだろうな、俺ら」
「…言うなよ、犬飼。空しくなるじゃん」
暖かい日差しが差し込む教室でうな垂れよう。
窓に近いから余計に暖かい。
このまま寝られたら、どれだけ気分いいだろう。
さっそく今日にでも、架空請求対策を頼もう。
善は、急げだ。
そう思って、そのまま寝る事にした。
《犬飼夜樹&井川総騎&戌塚志乃弥》
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