07 // あのひとと同じ機種に変更

メールが入った。日付が変わってすぐに。
何となく、寝られなかったから起きていた。
そうしたら、メールが入った。

『Sb おめでとう』

件名は、それ。
…まさか。
変な期待が胸を過る。
まさかまさか…。
微かに震えるでメールを開封する。

『Sb おめでとう
 From 乾悟麒

 新、誕生日おめでとう。』

短い短い本文。
それでも、それだけでも嬉しかった。

「覚えてて、くれたんだ…悟麒くん」

幸先のいい出だしだ、と思った。


学校へ着けば、部活の面々からも祝われた。
こうやって祝ってもらえるのは、久しぶりだったから。
教室へ行っても、祝ってくれた。

「誕生日おめでとう、新」
「ありがとう、志乃弥」

プレゼントじゃなくて、カードを貰った。
カードを貰うのは初めてで…。

「見てもいい?」
「あぁ、新のだしな」

小さなカードを開ければ祝福の言葉が書いてある。

「嬉しいな」
「誕生日というのは、その人が無事に生きている証拠だと私は思っている」
「志乃弥らしいね」
「そうか?」

クラスの面々からも祝われる。
同い年だね。
一歩、大人になったな。
すぐに追いつくよ。
―などなど。個性的な面々なので、楽しい。

「戌塚に先こされたなー」
「井川くんに、犬飼くん…どうしたの?」
「最初に渡そう!って意気込んでたんだけどさ」

二人らしい。
つい、可笑しくて笑ってしまった。
犬飼くんがふと、電話を取りだし、かける。

「あーもしもし?今どこだ?」

誰だろう?
小首をかしげていると、志乃弥に肩を叩かれた。
振りかえれば、廊下のほうを指している。

「お前等の教室だが」

開けっぱなしにされているドアの所には、悟麒くんが立っていた。
メールを思い出して、思わず硬直してしまう。
電話を切って、悟麒くんがこちらに歩いてきた。
いつもと変わらない、落ち着いた歩き。
私が、一人で慌ててるのかな…。

「やる」

目の前に出されたのは、小さな包み。

「あ、あり…がとう」

貰えるとは思っていなかったので、正直驚いた。

「…なぁ乾」

口を開いたのは井川くんだった。

「お前、携帯変えたのか?」
「あぁ変えた。システムエラーばっかりなってたからな」
ふーん、と納得したように頷く。
携帯、変えたんだ…。機種変か〜。

「それ、江山と同じだな」
「…は?」
「え?」

素っ頓狂な声が出てしまった。
まさか、携帯の機種が一緒だなんて、そんな事は…。
思わず自分の携帯を取り出して、悟麒くんの持っている携帯を見比べた。

「……一緒だ」
「偶然の一致というのもあるんだな」

そんな状態をみて、志乃弥が感嘆したように呟いた。

「わからん事があれば、新に聞けばいいのか」

ぽつりと呟かれた声。
顔を見上げれば、多少、赤くなっているような表情が目に入った。
赤くなっていると、そう考えるのは、自惚れだろうか?


十六歳、今年の誕生日は…とても印象的なものとなった。


《江山新&乾悟麒&井川総樹&犬飼夜樹&戌塚志乃弥》




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